購入物

玩具修理者 (角川ホラー文庫)

玩具修理者 (角川ホラー文庫)

わりと気まぐれで購入。本当は京極夏彦の本を買い直そうかと思ったんだけど、なんとなく現物を見たら「これをまた読むのか……」とゲンナリして断念。何しに本屋に来たんだよとなったから、引っ込みがつかずに何かを買おうと思って角川ホラー文庫をちと漁っていたら目にとまった。第2回日本ホラー小説大賞の短編賞受賞作ということで、つまらなくはないだろうという理由。
表題である受賞作の『玩具修理者』、一番驚いたのはクトゥルー神話がほんの少しだけ関わっていて(話の本質とは関わらないけど)、そういうのでも受賞できるんだということ。それはそれとして、短編で40ページ弱。実際の現場の描写よりも、途中行き着くまでの描写が怖かったかな。あれだ、話的には決して真新しくないんだけど、文章がうまいんだな。何というか、人を不安にさせるような文章というか。正気と狂気の境目を描写できているというか。話の内容そのものよりも、全体の雰囲気が印象に強く残った。
そして、もう一つの収録作品である『酔歩する男』。これが当たり。非常に面白い。表題作の4倍ぐらいの長さで、しかもホラーじゃなく(ある意味ホラーではあるが)SF。ホラー文庫じゃないやん! というツッコミを入れたくなるが、まあそれは置いておこう。とりあえず、タイム・トラベラーの話。とはいえ、そのタイムトラベルの仕方が斬新。最初はわけわかめだったけど、読んでいくうちに事態がのみこめてきて恐怖をじわじわと感じていく。そうそう、シュレディンガーの猫が出てくる作品はいくつか読んだことあるけど、その中でこの作品が一番しっくりきたというか非常にうまくできている。
もし機会があれば読んでみることを勧める。