労働問題 働きすぎの時代

働きすぎの時代 (岩波新書 新赤版 (963))

働きすぎの時代 (岩波新書 新赤版 (963))

大雑把に言えば、ここ10年で労働時間が先進国で増加してきていることの警鐘。日本はもちろん、労働時間がきちんとしていると思われるアメリカやイギリスなどでも、実はホワイトカラーを中心に凄まじい過重労働が行われている実態を示す。その原因として、高度資本主義の四つの特徴をあげている。それぞれの特徴を中心に章立てしているので、特徴については後回し。
○1章
1章では「グローバル資本主義」について。グローバリゼーションが進む中で、世界的に途上国を巻き込んで競争が激しくなり、先進国ではかつてないリストラと産業再編の大波が起きている。その中で、労働者は賃金の引き下げと労働時間の延長を迫られている。
かつては労働生産性が増すにつれて、当然労働時間は減るものと考えられていた。80年代末では40年代末の約2倍の生産性があるから、30年代40年代の学者たちは、90年代には週休3日、週22時間労働、年6ヶ月労働などになると論じていた。あの経済学者ケインズも、将来は余暇の時間が大幅に増えて、人々は退屈に悩まされるだろうと記している。しかし、現実は逆だった。80年代に流れが変わり、90年代には人々の間で働きすぎが大きな話題になっていった。最近ではkaroushi(過労死)がオックスフォード英和辞典に新しく加わるほど、世界中でこの問題が表面化してきている。
グローバル資本主義の中では、株主が必要以上に重視される。その結果、株式市場における評価が重要になり、企業は長期的な安定よりもむしろ短期的利潤を追求することを余儀なくされる。そのために、人員を極力削減して今いる人員に過重労働をさせる圧力が高まる。

○2章
2章では「情報資本主義」について。インターネットや携帯に代表される情報通信技術の変化が、ほとんどすべての産業において時間ベースの競争を強め、仕事のスピードを速め、仕事量を増やしている。また、それら情報ツールは、仕事の時間と個人の時間の境界を曖昧にし、仕事がどこまでも追いかけてくる状態を作り出している。そればかりか情報通信技術は、多くの部面で労働を単純化し、正規雇用の多くを非正規雇用に置き換えることを可能にし、雇用を不安定にしている。
日本では、派遣労働者個人請負労働者が急速に増えている。1994年度に58万だった派遣労働者は、2005年では236万人になっている。これはあくまで把握できている数だから、実際の数字ははるかに多いと考えられている。これらのほとんどは、不安定で低賃金である。
そして、家庭でも出先でも労働を強要されるようになる。ビジネスの「トゥエンティフォー・セブン(二十四時間週七日体制)」という言葉が印象的だ。

疲れた……。残りは明日。