見識不足のコラム 『「フリーター」は職業か?』

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/5673/
とりあえず、この記事を一読してほしい。
最初の四行ぐらいは正しい。確かにフリーターは職業という表現とは違う。就業形態だからだ。つまり、正社員や契約社員などと同じ属性。「あなたの職業は?」と訊かれて「正社員です」と答えるのはちと的外れだ。それと同じ。
しかし、このコラムが根本的に間違っているのは、フリーター=無職という、とんでもない誤解をしていることにある。まあ、フリーターという定義そのものが最近は微妙になってきているのはあるけれども、それは置いておいて、フリーターは有期契約できちんと働いている。無職ではありえない。もしフリーターが無職なら、外食産業やコンビニなどでは、店員の九割が無職ということになる。さらに言えば、国の統計ではフリーターは働いているものとしている。当然だ。もしフリーターも無職とカウントしたら、失業率は30%、40%になってしまう。そんなことをしたら政府の責任問題になる。まあ、フランスとかはフリーターも無職ということで失業率に入れているんだけどね。だから、日本の本当の失業率はとんでもない数字なわけだが、それは置いておく。もし政府がこのコラムを見たら、血相を変えるよ。「なにバカなことを言ってるんだ!?」って。あ、政府の責任問題を追求したいのかな。そんなわけないですね。
また、税金云々のくだりも、フリーターだって一定の収入があればきちんと天引きされてますよ? 低所得で所得税とか払っていないフリーターも多いけど、別に脱税しているわけでもなんでもない。法律で税金を払う基準が決められていて、それに従っているだけ。
この富岡周平氏が何歳かわからないけど、おそらく団塊の世代じゃないかな。今の若者とこの世代とでは、考え方に絶対的な断絶がある。時代がまったく違うことをこの人は認識していない。それに、もしかしたらフリーターとニートを混同している可能性もある。いやしくもコラムニストを名乗るならば、ここ最近の労働問題や雇用問題について幅広く知識を吸収しているべきだし、アンテナを常時張り巡らせている必要もある。コラムだからといって、個人の偏見に基づいた記事を書いていいわけではない。新聞に載っているのだから正しいのだろうと誤解する人だっているだろう。そして、この誤解は今の若者の雇用問題の根本に関わることであり、公器なのだから、文章に責任を持ってほしい。
ひとつ擁護するのであれば、親の自立が必要という所は確かにそうだと思う。で、このコラムで伝えたいことは、フリーターが云々よりも、親が子供から自立していないから子供も自立することができない。そして、そのことをおかしいと思わない状況が、今の社会に様々な歪みをもたらしている。そういうことだろう。だが、この文章ではフリーター批判が強く印象に残るのが事実。何かを批判するなら、正しい知識をもって批判してほしい。もっとも、このことは僕にもあてはまるわけだが。
妙にひらがなが多かったり、全国紙で「のさばる」などの乱暴な表現を使うのは、まあコラムということで本人のそういった個性を出したいのだろうから目を瞑る。それにしても、産経新聞ほどの大新聞が、このようなコラムを平気で載せるとは。