週刊ダイヤモンド 特集『リストラ父さん フリーター息子 悲惨世代』

表紙にえらいインパクトがあるので、コンビニやKIOSKなどでその存在に気づいた人もいるかと思う。この特集のテーマは就職氷河期時代に新卒を迎えた、いわゆる氷河期世代の悲惨な生活。今、25〜35歳にあたる層がそれで(僕もそうですな)、バブル世代と今のゆとり世代は新卒をばしばし採っているのに、この世代だけ正社員がしぼられ、契約社員やフリーターなどの非正規雇用につかざるをえず、正社員としての経験が積めなかったから転職でも想像を絶する苦労をするという話。それと、最近NHKスペシャルでも取り上げられて一部で話題になっているワーキンプア(働く貧困層)について。
とにもかくにも、この世代の不満は、上のバブル世代は何も就職活動をしなくても、企業の方から次々と就職案内がくる&接待攻勢で、大企業に就職することも容易だった。そして、今は団塊世代が大量に定年を迎える2007年問題が控えていることもあり、バブル最盛期まではいかないまでも空前の就職売り手ブーム。それに対して、挟まれた就職氷河期世代は、バブル期では考えられなかったような就職事情。ほとんどが妥協してランクを下げて就職するか、またはフリーターなどの非正規雇用を甘んじて受け入れるしかなかった。生まれた年が違うだけでこれだけの差が出てくる、しかもその差は冗談抜きで一生を左右する。もちろん本人の努力なども関係あるが、あまりにも異なる社会情勢下での出来事だったために、不公平感を強く抱えている。
この特集では、就職氷河期世代フリーター、契約社員に対するインタビューや座談会があるが、どれも切実なものが多い。
・わずか1年の新卒年代の差で、先輩が簡単に入社できた大企業には入れず、中小企業で妥協したAさん。しかし、その会社は高齢者が多く、パソコン導入にかたくなに反対し、逆にAさんは周囲から疎まれ結局退職。10年総務部で勤めたものの、パソコンが使えない総務部経験者はまったく評価されずどこにも再就職できずに、意気消沈したAさんは就職活動をやめてしまう。
・大手航空会社は次々と不合格。かろうじて子会社に契約社員として就職したBさん。問題なければ数年で正社員になれる可能性が高いとの触れこみだった。しかし、実態は5年ほど使って正社員登用が見え始めるとクビにして、常に若くて安い労働力を確保する図式となっていた。
などなど。バブル崩壊以後、企業は非正規雇用の旨みを知った。社会保険なし(本当は、正社員の3/4以上の労働時間があったら入れなければいけないんだけどね、労働法では)、昇給なし、ボーナスなし、ヘタすると交通費なし、のような条件で、月給20万円前後、場合によっては14,5万円で若い労働力を都合のいい時に使う。そして、いらなくなるとクビ。今の企業の好景気の理由の第一は、間違いなく非正規雇用の拡大だ。現在、働いている若者の約4人に1人が非正規雇用だ(3年前の2003年では6人に1人)。そして、平成18年版の労働経済白書では、職を持つ二十代のうち、年収が150万円に満たない低収入層は、92年から02年の10年で15.3%から21.8%に増えている。150万円未満といったら、地域にもよるが半分は家賃で消える。食費・光熱費・通信費・交通費など生きていくために必要な金を差し引いたらほとんど0になるのではないだろうか。しかも、それは150万円と仮定したときの話で、実際は一人で生活していくことができない層がどれだけいることか。
で、低収入だけが問題ではないんだよね。一度非正規雇用になると、正社員への道が事実上閉ざされるのが問題。しかも、正社員と変わらない労働をしても(今は、正社員を契約社員に切りかえることが企業でのブーム。もちろん、労働内容は変わらない)、契約社員を職歴として認めない企業は多い。フリーターにいたっては、社会状況がどうだったかなどをまったく考慮に入れずに、プラマイ0どころか「マイナス評価にする」という企業が30%にもなる。さらに、三十代になると再就職はグッと厳しくなる。よく言われる35歳がデットラインで、それを超えると一気に就職口がなくなる。きつい肉体労働ぐらいしかなくなるのだ。こうしたことが、情報が溢れている現代ではすぐにわかってしまう。つまり、自分の人生の先が見えてしまう。そうなると、未来に希望を失う層が増えていく。だって、今の日本においては、本当に暗い未来しかない。自分はこの先非正規雇用で薄給で都合よく使われて、身体が衰えてくるときには肉体労働しか残っていない。今は貯金できるほどの給料はなしい、かといって将来肉体労働ができなければすぐにホームレスが見えてくる。病気になったらそれこそアウト。かといって生活保護などのセーフティーネットもまるで役に立ってない。自分の数十年の未来がこんなものかと見えてきたら、そりゃ希望を失っても当然なわけで。失うとまではいかなくても、将来不安なのは間違いない。普通に勤めていても、いつ会社がなくなったりクビにされるか分からない時代だから。こんな状況では消費は進まないし、ましてや結婚・出産なんてできるわけがない。そんな社会はとても健全なものと呼べない。
とにかく、今の時代、非正規雇用というのは非常にリスクが高い。だが、企業は非正規雇用を拡大させていっている(また、その中で、数少ない正社員は人数が減ったぶん仕事量が増えて超長時間労働で悲鳴を上げている。しかも、経団連ホワイトカラー・エグゼンプション制度というサービス残業合法化法律を実現させようとしている)。そして、就職氷河期世代は、氷河期の時代に生まれ合わせたというだけで、非正規雇用になる可能性が非常に高い状況下で苦労してきたわけで、それで一生が左右されるのは到底納得できない。
氷河期世代の救済も含め、今の社会状況を何とかしないと、本当に日本社会の未来は暗い。政治家は経団連や資本家の献金に骨抜きにされるのではなく、真に国民のための政治をしなければいけない立場だというのに。よく言われることだが、これが外国だったらとっくに暴動が起きている。お上に弱い日本国民性がいいように利用されている現状が歯がゆい。何か行動をするにも資金が必要だしなー。
その他、この特集ではワーキングプア偽装請負についての記事もある。とりあえず、一読はすべし。