現代の貧困

ワーキングプア いくら働いても報われない時代が来る (宝島社新書)

ワーキングプア いくら働いても報われない時代が来る (宝島社新書)

ワーキングプアについては、これが入門書として手ごろだと思う。データもそこそこあるし。各章の間に、ワーキングプアの人(あくまで学者定義なので、ちょっと違うんじゃないかなという人も混じっているけど)のインタビューがあるのがいい。正直、こういった生の声をもっとたくさん集めた本とかが欲しい。学者的な分析の本は昨今たくさん出ているけど、そうした声を集めたものってないから。雑誌や新聞の特集とか、または投書欄とかで断片的に伺うことはできるけど、まとめることに意味がある。
この本でも、やはり格差の固定化が問題だと述べている。それと若年の雇用環境、正社員になれても厳しい労働環境(心のワーキングプアと表現している)についても。僕もこの問題が非常に重要だと思う。この本は各所でワーキングプアという言葉を連呼していて、どうしても便乗本という印象を払拭できないでいるが、たとえ売ることが目的とはいえ上にいる人たちに欠けている視点からのアプローチがされている意義は大きい。こういう本こそ政治家には読んでもらいたい。でもなー、テレビとかの討論番組を見ても、上にいる人の意識は相当庶民と乖離している。で、おそらく自分の考えが正しいと確信している。この溝は永久に埋まらない気がする、残念ながら。それこそ劇的な政治の動きが起こらない限り。
どうでもいいけど、この本でちょっと前にヨドバシカメラ派遣社員が信じられないような暴力を受けた事件を取り上げているけど、最初は家電量販店としか書いていないのに、ページが変わったらヨドバシカメラになっている。作者が単純にミスしたか、わざとなのか。気になるところ。