ニコニコ動画の今後について思うこと

http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1047553.html
http://d.hatena.ne.jp/pmoky/20071028/p1
上であげた記事のように著作権がらみで色々と動きがある昨今、ニコニコ動画へアニメ製作者側がどう関わっていくことがベターなのか、業界とはまるで関係ない身ではあるが真面目に考えてみる。長文注意。
何はともあれ、現状のニコニコ動画の状態がよくないことは誰もが共通認識を持っていると思う。「無料で色々見られてラッキー(笑) 権利者だかなんだかしらないけどゴチャゴチャ言わないで俺にずっと無料で見させろよ」と思っている奴でも、心の中で違法行為が絡んでいることは認識していると思う。それを問題視するかどうかは別として。
このフリーダムな無法ぶりはどうしても目立つから、一般的にニコニコ動画は忌避される。ニコ厨という言葉があることがいい例ですな。そのことにより、表の場でニコニコ動画の話題を出すことは暗黙の了解として避けられている。たとえばブログで「ニコニコ動画で○○の△△話を見たんだけどさー」とおおっぴらに発言することはタブーだ。それをするとまず間違いなくニコ厨と叩かれる。少なくとも「ニコニコ動画で」という直接的に書くのはよくない、せめてぼかせと。実はニコニコ動画とか見ている人でも、そういう発言をする人を叩く。おいおい、自分も見ているのに勝手な、というのは不適切。公の場で違法行為に関わること(現状ではアップされた違法物を見ることは罪に問われないはずだけど、間接的に違法行為に加担しているとも言えるからね)を発信するのは常識知らずと言われても仕方がない。「お前だって見てるだろ! 理不尽だ!」というのは通用しない。
話が長くなってしまったが、まずここで確認したいことは、公の場でニコニコ動画を語ることは現状ではタブー。なぜなら違法行為に関わるから、ということ。
で、だ。ぶっちゃけ、製作者サイドは一定の条件のもとでニコニコ動画にアップすることを公に認める方が得だと思うんだ。それにおける利点をあげる。
1.放送地域外でも見ることができる
現状、地方ではアニメを見る環境が乏しいと言わざるをえない。それが、ニコニコでアニメを見ることができるようになれば、放送地域外でもその作品の知名度が上がる。さらに、製作者側が認めれば、違法行為ではなくなり公に話題にすることができる。つまり、ブログに感想を書いたりする敷居が低くなる。今のご時勢、ブログによる横のつながりの情報伝達は馬鹿にできない。2ちゃんなどのアングラではないブログで口コミよりもはるかに情報伝達速度が速い、言ってみればIT口コミだ作動することは大きい。
2.放送延長・録画失敗組に、製作者側が何もしないで対応することができる
放送延長、録画失敗などで見逃すことはわりと普通にある。勝手な話だけど、それによって視聴意欲を失うことはままあると思う。で、勝手に切られて作品そのものを見切られると、その後の接点がなくなる。しかし、見逃した話を見ることができれば視聴意欲を回復するだろう。一部のアニメでは最新話だけとか、最新3〜4話ぶんは見ることができるサイトを設けていることがある。ロミ×ジュリでお世話になりました、はい。ただ、これを用意するのは手間だと思う。でも、それをニコニコ動画が勝手にやってくれることになればそれらの経費が浮く。
3.その作品に興味を持っていなかった層が目にする機会が増える
ニコニコ動画のメイン層はオタク。これは間違いない。そして、そんなオタクが多数集まるニコニコ動画は、メインターゲットが集まるという理想的な場所。業界が違うとはいえ、客商売をしている身として、そういう場があることがどれだけの大きな意味を持つか身震いするほど分かる。これを利用しないのは馬鹿だと断言できるほどに。つまり、うまくいけば、本来ならそのアニメに手を出さなかったオタクが目にしたことで手を出すかもしれない。一般人じゃなくオタクが目にするんだから、手を出してもらえる可能性は大幅にアップする。こんなに楽なことはない。
4.他のアップロードサイトに散ることが少なくなり監視しやすい
ぶっちゃけ、ニコニコ動画がなくなったら他のアップサイトに移動するだけ。この世の中、もはやこうしたサイトの完全な取り締まりは不可能。いくら違法違法と言っても、絶対になくならない。みんな無料に流れる。こればかりは仕方ない。どうしようもない。なら、多くのオタクが集まるニコニコ動画という存在は、そういったものを一箇所に集める効果がある。つまりは監視しやすくなる。どんどん色々な場所へ散って把握が難しくなるよりも、一つの悪を認めて監視するほうが効率がいい。ぶっちゃけ、警察と暴力団の関係と同じ。
ただしこれらの前提条件として、あくまで地上波で放映されたものだけアップを認める、つまりDVDのものは一切アップしてはならない、最も遅い放送地方の放映が終わらないとアップできない、アップが認められる日から一ヶ月たったら削除しなければならない、を絶対のルールとすること。そうなると「今より不便になるじゃん! イヤだよ!!」と言う奴が必ず出てくると思うが、それは妥協しなければならないと思う。むしろ、製作者側がアップをそういう条件で認めるのなら感謝しなければならない。
もう一度言うけど、製作者サイドが認めて合法化することで表に話題が出る頻度が劇的に変わる。これは断言できる。これまで表で口にすることがはばかられていたものが認められるわけだから。それによる効果は想像以上のものだと思うよ。
もちろん心配されるデメリットとして「見逃した人、見ることができない地方の人がDVDを買わなくなる」というのは根強く不信としてあると思う。でも、確たる証拠をあげられないのが難点だけれども、ニコニコ動画を見てDVD買わなくなるっていうような人は、最初から買わないと思うよ。買う人は買う。そういったジャンルじゃん、アニメって。DVDはコレクター要素が強いから。結局、DVDは値段が高すぎるから、よほど思い入れのある人でもないと買わない。洋画なみの値段で購入することができたら、録画して見ている人もそれなりにDVDを買う。これは間違いない。僕とかTVや映画館で見た映画でも、気に入ったものはDVDで買う。なぜなら安いから。で、気に入ったものはDVDで気軽に見られるようにしたいもん。
ニコニコ動画にアップされたことで買わなくなる人がいないとは言わない。ある程度の割合で存在するのは間違いない。でも、上にあげたメリットの大きさと比べたら、受け入れても大丈夫なデメリットだよ。むしろ、そのメリットをみすみす手放すことによる損失の方がでかいと思う。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0710/30/news065.html
あと、なんかJASRACが動いている話があるよね。もし、ニコニコ動画著作権料を払うことによって音楽使用が合法になれば、それによるメリットもある。つまり、MADの合法化。ストーリーの全アップは期限を設けるべきだが、断片的な使用は期限を設けないようにすれば、MADがずっと残る。そして、良MADは見る人にそれらの作品にいい印象を受ける。その印象が購買につながったり、アニメの視聴につながることも少なからずある。元来MADは違法であるから、世の中からMADサイトが凄い勢いでなくなったときもあるよね。でも、合法的に発表できる場所ができれば、職人が活性化したり、新たな職人が生まれる可能性がある。
もっとも、こちらはデメリットも馬鹿にならないが。JASRACに金を払うような事態になれば、ニコニコ動画が無料使用をいつまで認めるかという問題がある。つまり、今まで無料で見られたものが課金され、プレミアム会員は月額がさらに増えるという事態になる可能性は相当あると思う。そうなると、無料だからいた層がゴソっと撤退してしまい、ニコニコ動画のメリットそのものの前提である「多数のオタクがこのサイトに集結する」が崩れる可能性が大きい。こればかりは実際に事態が動かないと分からない。
もうひとつ、JASRACにみすみす金を渡すのは悔しい、JASRACの金の動きが不透明すぎ、という点もあるけれど、これは別の大きな問題が絡んでいるからここでは置いておく。これも何とかしないといけないと思うけどねー。

長文になったが、改めて確認したいことは、現状ではニコニコ動画は違法幇助サイトでしかないこと。しかし、ここまで議論されるようになったのならば、それを機に合法にしてしまう道を探るべきだと思う。両者が歩み寄るのが最善だと思うんだよね。どちらか一方の「利」ばかりが増大しても共倒れになるだけ。
違法のものが盗人たけだけしいと思うのは非常によく分かる。でも、素人でも情報を異常な速度で伝達することができるようになった今の時代。新たな道を生み出さなければならない状況になるのはむしろ必然。製作者サイドも、損害賠償してやると随分遠まわしな牽制をしたり、イライラしながら黙認するんじゃなくて、膝突き合わせてしっかり議論して下さい。真面目な話。