王と私

韓流の時代劇。正直、韓流ドラマはずっと忌避していて、冬のソナタすら主人公がマフラー眼鏡ということしか知らない。
で、母が韓流ドラマにハマっている。まさか「ヨン様ー!」とか恥も外聞もなく騒ぎ立てる婆さんになってしまったのかと青くなったが、韓流イケメンにはまったく興味を示していないのでとりあえず安心。むしろ、そういうイケメンが出ているのは面白いものが少ないそうだ。
そして、この作品をやたら勧めるので、録画されているものをここ数か月でしこしこ見ていた。アニメの録画消化が進んでいないのはこれも理由の一つだったんだけど、いや、これはマジで面白い。暴君として有名な燕山君の時代、宦官のトップにいるキャラが主人公なわけだけど、とにもかくにも、朝鮮は王室の権力闘争が露骨&徹底的で、ある意味見ていて笑える。今でも、大統領が辞めると逮捕されたりしているけど、とにかく血で血を洗う権力闘争が凄まじすぎる。一族郎党皆殺し。なんか、王室に生まれた瞬間死亡フラグが立ちまくり。もちろん、そうした権力闘争はどの国も共通してあるけど、ここまで露骨なのは珍しい気がする。いや、本当に容赦ない。
そして、物語も終盤になっていよいよ燕山君が王になり、そこからが楽しすぎる。燕山君は民のための王になろうと努力しているんだけど、一人の宦官が陰謀で廃妃にされ、さらには自害させられた燕山君の母親のことで燕山君をたきつけていく様が実に面白い。燕山君がどんどん精神的に壊れていって周りの意見に耳を傾けようとしなくなるのがさ。この燕山君の演技がうますぎる。「何だと?」の「モラゴ?」(モーラにしか聞こえないが)が多用されるわけだけど、その声の調子や表情が秀逸。主人公や、その他メインキャラクターたちの演技もうまい人が多い。
いや、韓流を侮っていた。ドラマとして実に面白い。まさにドラマティック。稚拙の域に達する(そんなのでいいの? みたいな)露骨であざとい権力闘争の図が、日本の時代劇とかでは見られないなーと。とにかく先の展開が気になる上、間をおかずに色々な出来事が起こって目が離せない。最終話近く、燕山君「モラゴ?」→色々ある→燕山君「モラゴ?」 のコンボが楽しすぎる。1話につき80分ぐらいあると思うけど、10回近く「モラゴ?」と言っているような。王を諌めようとする官僚たちに対してひたすら殴る&蹴るをする様子は、まさに、「殿中でござるぞ! 殿、ご乱心!」な阿鼻叫喚。てか、燕山君の人が本当にうまい。
このドラマは本当にお勧めできる。面白すぎ。
ただ思うのは、全63話という長さは武器だなーと。それまでに積み重なって来た人間ドラマが、終盤に来て複雑に絡み合って毎話意外な展開を見せる。日本のドラマもアニメも、昔は長かったじゃん。少なくとも全24話前後は最初から保障されていて、長いのは50話前後。それだけの長さがあれば、先を見据えたストーリー構成ができる。最近のものは、10話ちょっとばかりでさ、キャラクターを視聴者が把握するのに半分使ってしまう。そして、メインとサブキャラたちがどういう動きをするのか視聴者が完全に理解して、さあこれからは「こいつらはこれこれこういうしがらみがあって、これこれこういうことをやりますよ」という前置きなしに自由に話を作れる段階になったところで話は終わりへと向かっていく。勿体ないよなー。