企業の家族依存

本田由紀(最近では『「ニート」って言うな!』が有名かな)が論説を書いていた。わりと興味深い内容で、特に居郷至伸という社会学者が書いた最近の論文を取り上げていで、それが「企業が家族に依存している」という内容。
どういうことかと言うと、よくある若者批判論では、フリーターなどの非正規雇用に就いている若者は向学心がないから正社員にならず、低収入でもやっていけるのは家族にパラサイトしているからだ、何を甘えているんだという一方的なものがほとんどだった。しかし、よく考えてみれば、いや、よく考えなくても複数仕事をかけもちしてボロボロにならないと生きていくだけの賃金が稼げない現状がそもそもおかしい。若者の3人に1人が低収入の非正規雇用という異様な現状で暴動が起きないのは、ひとえにまだ彼らの親に若者を養うだけの力があるだけで、企業はそれをいいことに若者の待遇を改善しようとはしていないということだ。ミクロの視点では親に甘えている若者はいるだろうが、すでにマクロの視点から見たら企業が家族によっかかっているに過ぎないわけだ。だからこそ、色々な事情で親に経済支援をもらえない若者の生活が困窮してしまう。
僕も前から何度も書いているけど、結局今の日本で決定的な破綻が起きないのは、まだ彼らを養う親に余裕があるだけの話。もうすぐ彼らの親が定年を迎えると、この論説での表現を使えば「むき出しの低賃金労働者の巨大な群れ」が出現することになる。日本は住居にかかる費用が半端なく高いから、若年ホームレスの集団が出てきそうだし、そうしたホームレスが集まるスラムができる可能性もあれば、暴動が発生する可能性すらある。政府は早くこれを何とかしないと破綻が待っている。ま、自分たち金持ちは海外に逃げるからどうでもいいのかもしれないが。
最後に、我々が怒りの声を上げなければダメだとあったが、まさにその通りなんだよなあ。このテの本や論説を読むと、どの識者も今の若者が何も怒りの行動を示さないのを歯がゆく思っている。