こんな本を買ってみた

ユニオン力で勝つ

ユニオン力で勝つ

ユニオン関係者の著者二人が、現在の労働のひどい現状を改めて示し、その解決に労働者個人は何をするべきかを書いた本。昨日買ったばかりなのでまだ全部は読んでいないけど、書いてある内容は概ね同意できる。こういったことに対して興味を抱いている者にとっては事実確認にすぎない面もあるけれど、実際にユニオンメンバーとして戦ってきた二人の会話は説得力が違う。その中で特に印象的だったものを抜粋。

やれ少子化対策だ、とかけ声ばかり大きいけれども、やはり雇用の安定をきちんと図らないで、安定した生活設計ができるのかとなると、それはなかなか困難だ。だから、私が「持続困難型社会ニッポン」だと言うのは、そういうところにあるんです。

これは本当にそうだと思う。僕もここで何回も書いているけど、将来を見通せないと不安だもの。自分が毎年どのぐらいの収入を得て、何年後にはこれだけの貯蓄ができていて、自分は会社でどのような位置にいるか、ということがある程度予想できないと絶対に不安になる。ひどい労働条件でいつ自分が潰れるか分からない、有期契約でいつ切られるか分からない、という状況に置かれている人間が多すぎる。しかも、概してそういう人間は低収入であることも多い。収入と結婚率の相関関係は露骨に出ているし、結婚できても子供を産んだら破綻するという状況では子供なんて産めやしない。もちろん、政府だってバカじゃないからそんなことは百も承知だろうが、そこら辺を変えようとすると様々な既得権益を崩していくことになるから小手先だけの改善(と称するもの)でお茶を濁そうとするんだろうな。

最近にわかに流行語になったニートとか、いわゆるフリーターを含めた若年雇用の問題ですが、非常に危険だと思うのは、ニートというのは差別を助長する言葉になっていることです。
(中略)
そういう若い人たちのプラットホーム機能をやっているNPOが出しているデータがあるのですが、それを見ると、最初に入った職場をどうして辞めたのかというアンケートに対して、半数の若者が「長時間労働、過密労働、過重労働で、このままではもう死ぬかと思った、辞めざるをえなかった」あるいは「いじめられた」と答えている。過酷な現場で働き続けるのが困難だということで辞めざるをえなくて、次に働いたときにまたそんな目に遭うのではないかというトラウマになってしまっている。もう一度職場に入るのを躊躇するという現象が生まれているんだ。
たとえば、「一日18時間労働を一年半やった。退職届を出したけれども何度も破られた。だけれども、やっと無理やりに退職した。その後入社した会社では一日14時間労働だった。精神的ストレスで救急車で入院したのでそこは退職できた。もう人間が怖い。とはいっても、少し落ち着いてきたので求職活動を始めた。また同じような所に勤めてしまうのではないかと不安だ」とアンケートで述べているのです。こういうアンケートを読むと、こういう人たちに対して、怠け者で働く気がない、やる気がないといったレッテルを貼ってしまうというのは、本当にひどいなと思いますよね。

これは本当に重大な問題だと思う。一時期厚生労働省の中では、現在の若者の労働環境の悪さや失業率は企業が悪いという意見で一致していたのに、そこでニートという言葉が出てきて一気に状況が変わった。またお得意の「今時の若者」論法で全ての責任を若者にかぶせる。本当は政府の若年雇用政策の失敗なのに。企業は利潤を追求するものだから絶対に企業からは今の状況は変わらない。であるからこそ、政府が企業に対して縛りをかけなければならないのに。
よく言われるニート像は、今も昔も一定数いた。しかし、今ニートが増えているというのは、単純に若年失業者が増えているだけであって、これは完全に政府の雇用政策に関係している。しかも、今の労働環境ではどうしようもない。しかも、今の若者の非正規雇用率の高さは異常。今日にでも何とかしないと将来の日本がどうなるか知れないというのに。